交通事故の大半は示談で解決している

車13

交通事故を起こすと、刑事上、行政上、民事上の責任を問われます。交通事故における民事上の責任とは、損害賠償のことです。損害賠償の支払い方法や金額は、被害者と加害者とが話し合って決めることができます。これが、示談交渉です。

では示談交渉をする際は、どのようなことに気をつければよいのでしょうか?そのポイントを紹介します。

示談代行付自動車保険とは?

自動車を所有している人の多くは、自動車保険(任意保険)に加入しています。この自動車保険は、営業用の自動車が加入しているものを除き、示談代行付自動車保険となっているものが大半です。示談代行付自動車保険というのは、交通事故により他人にケガをさせた場合、被害者との示談交渉を保険会社の担当者がやってくれるという保険です。

自動車共済保険も示談交渉サービスを付けるものが増えています。示談代行付自動車保険は、弁護士法により非弁護士が他人の法律事務を取り扱うことを禁止している条項との関係で、さまざまな問題を含んでいます。そのため、日本弁護士連合会と日本損害保険協会との間で、了解を得たうえで販売されているのです。

保険会社の担当者と交渉することになる

示談交渉の担当者は、会社において損害論や示談交渉のテクニックなどをみっちり教育された人材であることが多いです。被害者としては、保険会社の担当者よりも、加害者を相手にするほうが交渉しやすいと感じるかもしれません。

保険会社の担当者との示談交渉を拒否し、加害者と直接交渉することは、本人の自由です。しかし、加害者は、保険会社のほうから「自分一人だけで回答してはいけません」「必ず保険会社と打ち合わせてから返事をしてください」などと、言われていることでしょう。

また、加害者も示談交渉を保険会社に任せることで、交通事故の矢面に立つことを避けようとします。結局、示談交渉は、保険会社の担当者と行うことが大半なのです。

感情的になってはいけない

被害者が示談交渉の席上で、加害者に対して被害感情をぶつけたくなる気持ちはわかりますが、示談を締結していくうえでは効果が薄いです。相手の態度に誠意が見られず、どうしても加害者のことが許せないなら、示談交渉の席上ではなく、むしろ加害者の罪が問われる刑事裁判で「加害者を厳罰に処してもらいたい」と、意見を述べるほうがよいでしょう。

民事の損害賠償の問題で、徹底的にやりたいということであれば、損害賠償を請求する訴訟を起こし、訴訟上の和解も拒否し、判決によって相手方に支払いを強制するより術はないかもしれません。保険会社の担当者が、示談交渉の席で提示してくる示談額の案が低すぎることだけが問題であれば、弁護士に依頼して、裁判でも基準として用いられている日弁連交通事故センターが採用している賠償額を請求することができます。

その他には、交通事故紛争処理センターに申し出て解決をしてもらうという方法もあります。

主役と脇役の関係

被害者は、加害者が保険会社から支払ってもらった保険金で賠償を受けるというのがオーソドックスな流れです。損賠賠償保険の主役は加害者で、被害者はあくまでも脇役なのです。しかし、被害者をいつまでも脇役にしておけば、主役の加害者がいつまでも示談をしないなどのトラブルが起こることがあります。

一番手厚い保護を受けなければならない脇役が非常に困るわけです。そこで、この脇役である被害者を主役に近づけるために、仕組みが変えられました。自賠責保険で認められている被害者請求を、任意保険でも一定の制限はあるものの認める制度が導入されたのです。

しかし、被害者の任意保険会社に対する直接請求は、被保険者である加害者が損害賠償責任を負担すること、保険会社が加害者に対して填補責任を負うこと、などの規定があります。自動車保険で主導権を握っているのは、加害者(被保険者)です。

保険会社は、「被保険者より被害者に保険金を払ってください」という支払指示書を取って、保険金支払いの処理をしているのです。

悪質な加害者に注意

示談や裁判の結果、賠償支払義務が確定すると、加害者が保険金請求権を得ます。悪質な加害者になると、保険会社に対し、保険会社から被害者に直接支払うのではなく、加害者が保険会社から保険金を受け取る手続きをします。

「加害者から被害者に支払ったほうが、被害者を慰め、謝罪するのに好都合だから」と言葉巧みに話をするのです。その結果、悪質な加害者が示談書を提出して保険金を受け取ったあとに、そのお金を自分で使ったり、極端な場合は行方不明になったという事例があります。

こうした加害者には、保険金以外に金銭支払能力がない場合がほとんどです。この場合、被害者は保険会社に対し、再度保険金を被害者に払えと要求しても、認められる事例はほとんどありません。

無料相談をしてくれる機関がある

交通事故で一家の大黒柱を亡くしたり、大ケガをして多額の治療費がかかりそうな場合などでは、経済的な不安から、つい相手の言うがままに示談をしてしまいがちです。しかし、示談書を交わす場で、加害者が賠償金を支払ってくれれば問題ありませんが、たいていは後日支払うという約束になっているはずです。

この場合、示談書を公正証書にしておくと安心です。相手方が約束を破っても、新たに催告や裁判をすることなく、加害者の財産に強制執行をすることができます。また日本の法律では、強制保険に加入していない車は乗れないことになっています。

その強制保険を利用して被害者請求という方法で、加害者の同意なく、当面の治療費や生活費を直接保険会社に請求できますし、他にも健康保険や労災で治療費を払ってもらうことができます。加害者に誠意がなかったり、示された賠償金額に納得いかなければ、このような手立てで当面の経済的不安を取り除き、腰を落ち着けて示談交渉をするべきです。

なお、日弁連交通事故相談センターや市区町村が主催する市民法律相談では、弁護士が交通事故に関する民事上の法律相談を無料でしてくれます。また、損保協会ADRセンター、都道府県や政令指定都市なども、交通事故の損害賠償に関わる無料相談をしてくれるので、加害者側と話し合う前に、どのような損害や損失を要求できるのかを理解しておくことをおすすめします。

事前情報があれば、示談交渉の場でいきなり保険会社の担当者が出てきたとしても、うろたえることはないでしょう。